平成19年度における眼球運動の解析によって、遮蔽物体の位置予測課題における遮蔽後の物体速度の低下、すなわち遮蔽物体の予測位置は実際の位置よりも進行方向手前に予測するのは、脳内で作られる遮蔽物体運動速度のモデル(速度表象)が、遮蔽により低下することに起因することが判明した。 平成20年度は、前年度に判明した予測特性について更に検討するために、眼球運動の速度表象低下に与える影響、および低下した速度表象に関する学習効果について検討した。 速度表象の低下が、眼球運動速度(視点の移動速度)の低下によるものかを検討するために、視点を固定した条件(固視条件)と視点を固定しない条件(自由条件)において、位置予測課題を実施した。その結果、固視条件と自由条件の両条件下において、予測速度(遮蔽物体速度)は、ほぼ同じ速度であった。視点の移動速度は、速度表象を反映するものの視点移動速度、および眼球運動速度の低下により速度表象の低下が生起される者ではないことが明らかになった。 一方、遮蔽物体の実速度から大幅に低下した速度表象が、反復練習(学習)により、速度表象がどのように変化するのか、その過程について検討した。実験では、被験者に課題1回ごとに、その時の正解位置をフィードバックする位置予測課題を400回実施した。課題を100回、200回、300回、400回終了した時に、位置予測課題(フィードバック無し)を行い、予測速度を求めた。その結果から速度表象の学習過程は、初期(100回後)において位置の誤差を修正する過程が観察され、その後速度の誤差を修正する傾向が観察された。また、標的速度も通常(15deg/s)、低速(7.5deg/s)、高速(15deg/s)においても同様の傾向を示すこと、その学習効果は、数ヶ月にわたり維持されることが明らかになった。
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