研究概要 |
(1)性周期:10名の若年女性に対し,血中女性ホルモン濃度で確認された卵胞中期と黄体中期に1)皮膚温冷覚閾値テストと2)イオントフォレーシス発汗テストを実施した.1)の皮膚温冷覚閾値テストにおいて,舌下温・平均皮膚温・平均体温・全身温冷感・快適感に有意な性周期差はみられなかった.冷覚および温覚閾値には,前額・胸・背・前腕・手背・大腿・下腿・足背のいずれの測定部位でも卵胞中期と黄体中期の間に有意な性周期差は認められなかった.2)のイオントフォレーシス開始直前の舌下温および前腕・大腿の皮膚温には,有意な性周期差はみられなかった.軸索反射性発汗および直接刺激性発汗の各種指標には,前腕・大腿とも卵胞中期と黄体中期の間に有意な性周期差は認められなかった.以上の性周期に関する2つの実験結果から,皮膚の温・冷覚閾値,軸索反射性発汗(交感神経節後線維の要素)および直接刺激性発汗(汗腺自体の要素)は性周期および女性ホルモン濃度で修飾されないことが示唆された. (2)性差:上記1)の皮膚温冷覚閾値テストを13名の若年男性と29名の若年女性に実施し,温・冷覚閾値,軸索反射性発汗,直接刺激性発汗の性差を検討した.その結果,冷覚では前額・胸・背・前腕・手背・大腿・下腿・足背のいずれの測定部位でも,温覚では前額・前腕・手背・足背で女性が男性より鋭敏な皮膚の温冷覚感受性を示した.上記2)のイオントフォレーシス発汗テストを13名の男性と25名の女性(卵胞中期)に対して実施した結果,軸索反射性発汗および直接性発汗とも女性が男性より劣っていることが示唆された.以上の性差に関する2つの実験結果から,女性は男性に比し,汗腺機能(交感神経節後線維および汗腺自体の両要素とも)は劣るものの,鋭敏な温度感受性を有することが示唆された.
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