研究概要 |
矢の磁力支持風洞実験では、再現性を期待できる金属製矢(箟)の試験を実施し、その抵抗のレイノルズ数依存性、姿勢角変化に伴う軸に直角方向の力(揚力)、重心周りの回転トルクを計測した。また、矢師に依頼して磨きと砂目の矢と箟をそれぞれ製作してもらい、磁力支持するために必要な加工法と矢の個体差を考慮した風洞試験計画について検討した。更に、和弓の飛び性能に関心のある大学、メーカーとカーボンファイヤー製箟の空力特性を評価する共同研究を実施し、より広範な箟形状に関するデータの取得に努めた。この結果、通常の競技用鏃形状では箟表面の境界層は乱流に遷移した状態であることが判り、この結果は、東北大学の光学的な矢表面の境界層を可視化して得られた結果とも一致している。ただし、鏃の形状を工夫することで、基準長を箟の長さに取った最大レイノルズ数で210万まで全域で層流に維持できることも判り、重心の位置を調整することにより極めて減速の少ない矢を設計する可能性を見出した。 一方、野外試験では、弓道場(電気通信大学)において弓道師範の研究協力者が放つ矢を高速度ビデオカメラ(毎秒1,800〜4,000フレーム)によって矢の飛翔を後方と斜め後方から撮影し、矢の振動運動と回転運動を定量的に解析した。また、矢の軌道に沿ってスリット光源(ハロゲンランプ)を等間隔(6m)に4台配置し、光源上空を矢が通過する時刻を特定し、そのデーダから矢速度の減衰則を解析し、矢に働く空気抵抗(抗力)を推定した。風洞実験による空力特性のデータは箟の部分だけの抵抗であるが、比較・検証した結果、矛盾の無い良好なデータであることを確認できた。矢の回転速度、撓みの測定結果は、今後の風洞試験用矢の模型改修にとって重要なデーダとなった。
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