前年度に引き続き、Deoxycorticosterone acetateおよび1%食塩水を用いて作成した高血圧モデルラットを用いて心筋、血中ANP濃度、BNP濃度の測定をおこった。特に前年度、右心房のANP含量、血中ANP濃度については右心房のANP含量が運動により低下する傾向がみられ血中ANP濃度の運動による上昇の1要因と考えられたが、その他の部位についてははっきりとした傾向が見られなかったので、これらについてさらに検討した。しかしながら昨年と同様、明解な差異は見られなかった。今年度は心筋中のANP、BNPの合成過程の変化にも注目し、ANPmRNA、BNPmRNAの測定をRT-PCR法を用いて行った。これらの結果にも残念ながら運動による有意な傾向はみられなかった。とくに右心房、左心房の組織は小さく、RNAの収量が十分でないことも原因のひとつになった可能性がある。また今回用いたRT-PCR法はこれまでも、定量的な測定法というよりは半定量的な測定法と考えられてきた。現在、定量的な測定法としてリアルタイムRT-PCRがある。これを行うためには専用の測定機器が必要である。開発された当初はこの測定機器は非常に高価なためリアルタイムRT-PCR法による測定は難しかった。しかし近年この測定機械が普及するにしたがって価格も低下してきた。このような事情もあり最近、この機械を導入することができた。そこでリアルタイムRT-PCR法を用いて、水泳後のANPmRNA、BNPmRNAの変化について測定を心臓の各部位を用いて行っていく計画である。これらの測定と心臓各部位のANP、BNP含量、血中濃度の測定を進めていけば運動後の回復過程の状況が明らかになると考えられる。
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