研究概要 |
平成20年度に行った実験は低酸素環境下でのトレーニングが中・高齢者の身体に対してどのような生理的な影響を及ぼすかについて検討を行った。中高齢者(平均63.4歳)15人を対象として、低酸素環境下トレーニング群(8名)と常酸素環境下トレーニング群(7名)に分け、週2回、約3ヶ月間のトレーニングを実施した。トレーニング開始前と後において形態、血液性状、近赤外線分光器を使用した筋内酸素動態、心拍数、血中乳酸、自覚的運動強度、エネルギー消費量などの測定を行った。その結果、低酸素環境下トレーニング群ではトレーニング開始前とトレーニング終了後の比較した場合、形態(体脂肪率、体重、BMI)、血糖、中性脂肪、遊離脂肪酸、アディポネクチン、筋内酸素動態(大腿部)などは変化が見られなかったが(常酸素環境下トレーニン群も同様に変化なし)、成長ホルモン、インスリンには有意な差が見られた。これらの結果、低酸素環境下(低酸素室利用-標高2200m程度、酸素濃度16.0%)でのトレーニングはインスリンや、成長ホルモンなどの活性を高め、肥満防止や、糖尿病予防に有効な運動である可能性が示唆された。また、心拍数などの変動や、自覚的運動強度などに関しても、常酸素環境の運動とほとんど変化がなく運動が行われた(現在エネルギー消費に関して分析中。これらのことから中高齢者にとっては標高2,000m程度のトレッキングは安全に行うことができ、高齢者のQOLを維持することやさらに向上させる意味でも高地環境での運動は有効であると思われた。但し、常圧環境で、室内温度、湿度などが運動中もほぼ一定環境下での測定であるため、低圧環境または高地における気温などの変化を想定すると十分な注意が必要と思われる。
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