研究概要 |
21年度は,夏季と冬季に競技形態(陸上トラック、室内プール)での体温調節反応、浸透圧、ホルモン及び免疫の動態に関する検討である。被験者は、脊髄損傷の車椅子競技者(車椅子マラソン)5名及び水泳競技者5名、健康な大学生の陸上競技者5名及び水泳競技者5名である。測定は、400m陸上競技場及び50m室内プールにおいて9月(夏季)及び12月~3月(冬季)に実施した。夏季の環境温度は、陸上競技場が気温27℃、湿度80%、WBGT29℃、室内プールが水温30℃、湿度90%、WBGT28℃であった。冬季の環境温度は、陸上競技場が気温12℃、湿度60%、室内プールが水温32℃、湿度88%であった。陸上運動は10,000m走を車椅子競技者25分以内、大学陸上競技者45分以内、水泳運動は1,000mを自由形で脊髄損傷水泳競技者、大学水泳競技者ともに40分以内で終了するようにした。測定項目は、発汗量と全身6ヶ所の皮膚温、酸素摂取量、食道温、カテコールアミン、好中球の活性酸素産生能を、運動前後、及び運動終了後60分経過時にそれぞれ実施した。 安静時の体温調節反応は、夏季と冬季、脊髄損傷者(車椅子競技者及び水泳競技者)と大学生(陸上競技者及び水泳競技者)ともに大きな差異はなかった。運動負荷による体温調節反応は、車椅子競技者と大学陸上競技者の夏季で運動前後の発汗量と平均皮膚温、産熱量、深部体温等について車椅子競技者が大学陸上競技者より劣る傾向であった。冬季では、車椅子競技者、大学陸上競技者ともに差異がなかった。また、脊髄損傷水泳競技者と大学水泳競技者の比較では、夏季と冬季において運動や回復において差異は認められなかった。活性酸素産生能については、全ての競技者で差異は認められなかった。脊髄損傷競技者の体温調節反応は、夏季の陸上運動において健常者との差異があるが、水泳運動では健常者との違いは認められなかった。脊髄損傷競技者の高温下での陸上運動では、対策が望まれる。
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