研究概要 |
小学生の間で広く行われているドッジボールについて、理想的な投球フォームや発育発達段階に応じた練習量、適正なボール重量などについて提言を行う際の基礎的な資料を得ることを目的として研究を行った。 第17回全日本ドッジボール選手権全国大会(2007年8月,大阪市舞洲アリーナ)において、ドッジボール試合のビデオ撮影を行った。そのビデオ映像の分析および観察の結果、以下の結果を得た。1セット5分間の試合におけるチーム総投球数は39±12回(平均値±標準偏差)であり、そのうち1名の選手により14±5回の投球がなされていた。2名の選手で全投球のうち66%を投げ、一方、試合中に一度もボールを投げない選手も選手数の3分の1に相当する平均4名存在した。投じられたボールの初速は21.6〜24.0m/sであり、同じ年代の子どもの野球投手のそれと大差なく速かった。投球フォームは、野球投手のようなオーバーハンドタイプと、肘を伸ばしたままのサイドアームタイプに二大別された。チーム関係者からの聞き取り調査によって上肢関節障害が疑われる児童が多く存在することが明らかになった。 使用されるボールは重量380gと野球の3倍程度重く、また練習や試合を通じ短期間でかなりの球数を投げることもありえることから、ドッジボール選手においても野球投手と同様な投球障害の発生の危険性が高い。スポーツとしてのドッジボールのますますの発展のため、また子どもの健全な発育発達のためにも、関連する上肢関節障害の実態の調査と上肢関節障害に関係したバイオメカニクス的な動作分析の必要性が強く示唆された。
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