研究概要 |
1.本研究は,児重生徒の登下校中の安全に大きく影響する通学区域内の安全について,これまでに研究してきた小地域分析の手法を用いて分析・考察し,通学区域内の安全向上に役に立っ理論と技術の基盤を開発することを目的とした。具体的には,地域社会のリスクを,国勢調査の小地域統計データなどを組み合わせて分析し,背景となるリスクまたはリスク因子を電子地図の上で可視化することによって,通学区域内のリスクアセスメント・リスクコミュニケーションのためのツールを開発することで「根拠に基づく学校安全」の基盤となる研究を行おうとしたものである。 2.当初は実際に研究のフィールドとなる地域で発生している具体的事件を直接的に扱おうとしたが,研究の途中で,かかるデータの安定性(頻度や空間分布が散発的過ぎる,秘匿情報があるなど)やデータの入手困難などの課題に直面した。そこで,リスク因子を客観的に捉える方法を検討し,安全マップでしばしば取り上げられる危険箇所である「暗い場所」に着目し,街区程度の広がりの中で実際の「暗さ」を客観的に測定し,これを地域社会のさまざまな客観的指標と関連付けて分析し,地図に表現することにした。 3.路面照度の実測データを,その地域の昼間・夜間人口の比率や,地域の夜間人口あたりの事業所数などを表現した地図と重ね合わせて,相互の関連性を検討した。その結果,一定の規則性があることが示唆された。同じ方法を用いれば,少なくとも都市部の分析は普遍化することが出来ると考えられた。また,夜間の通学路の安全を考えるための客観的な地図を作成できることから,学校や地域社会におけるリスクコミュニケーションツールとして応用できるのではないかと考えられた。
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