研究概要 |
本研究の目的は,小・中・高校の児童生徒を対象として,個人の心身の健康状態および問題行動に個人レベルおよび学級レベルの心理社会的学校環境要因がどのような影響を及ぼしているかについて明らかにすることである。 平成19年度は,沖縄県那覇市の全公立中学校17校の各学年2学級(計102学級)に在籍する中学生3,733名を対象に,学級において自記式質問紙調査を実施した。調査期間は平成19年12月である。対象のうち,3,406名から質問紙を回収し分析に用いた。本年度の調査内容は,身体・精神的自覚症状,抑うつ症状,心理社会的学校環境(学校満足,規則,級友サポート,先生サポート,親サポート,過剰な学業期待,勉強プレッシャー,学校の安全性),生活習慣,地域行事参加状況,社会人口統計学的変数などから構成される。現在,データ入力が終了し,詳細な解析を開始したところである。これまでの解析で明らかになったことは,以下の通りである。1)中学生の抑うつ症状の級内相関係数(ICC)を算出したところ,学級レベルのICCが学校レベルのICCよりも大きく,抑うつ症状の変動が学校よりも学級の違いによって説明されることが示された。本知見はこれまでの予備研究の結果と同様であった。したがって,今後の分析では,集団レベルの階層として学級を用いてモデル化することにした。2)個人レベルにおける抑うつ症状と心理社会的学校環境要因との相関係数を算出したところ,抑うつ症状と学校満足,規則,級友サポート,先生サポート,親サポート,勉強プレッシャー,学校の安全性との間に有意な関連がみられ,なかでも学校満足の相関が最も強かった。今後は学級レベルの心理社会的学校環境の影響を詳細に解析する予定である。次年度は高校生を対象に健康危険行動を含めた同様の調査を行う。
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