研究概要 |
本研究の目的は,小・中・高校の児童生徒を対象として,個人の心身の健康状態および問題行動に個人レベルおよび学校レベルの心理社会的学校環境要因がどのような影響を及ぼしているかについて明らかにすることである。 平成20年度は,沖縄県全域の全日制県立高等学校29校の各学年1学級(計87学級)に在籍する高校生3,248名を対象に,学級において自記式無記名質問紙調査を実施した。調査期間は平成20年10月〜12月であった。対象のうち,2,850名から質問紙を回収し分析に用いた。本年度の調査内容は,身体・精神的自覚症状,抑うつ症状,心理社会的学校環境(学校満足,規則,級友サポート,先生サポート,親サポート,過剰な学業期待,勉強プレッシャー,学校の安全性),健康危険行動,地域行事参加状況,社会人口統計学的変数などから構成される。これまでの解析で明らかになったことは,以下の通りである。1)高校生の健康危険行動の級内相関係数(ICC)を算出したところ,ある程度の大きさの学校・学級レベルICCがみられ,学級レベルICCが学校レベルICCよりも大きかったことから,高校生の危険行動は集団レベル,特に学級レベルで類似する傾向にあることが示された。本知見はこれまでの先行研究の結果と同様であった。2)学校をランダム効果とした説明変数なしモデルでは,高校生の喫煙,飲酒,性行動の学校間分散は有意にばらついていたが,個人レベルの学校満足度や他の共変量,および学校レベルの学校満足度を投入したモデルでは,喫煙と飲酒の学校間分散は残存していたが,性行動の学校間分散は消失していた。また,学校レベルの学校満足度は個人レベルの喫煙や飲酒に影響していたが.性行動には影響していなかった。
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