研究概要 |
本研究の目的は,小・中・高校の児童生徒を対象として,個人の心身の健康状態および問題行動に個人レベルおよび学校レベルの心理社会的学校環境要因がどのような影響を及ぼしているかについて明らかにすることである。 平成21年度は,沖縄県全域の公立小学校31校の第5・6学年2~3学級(計132学級)に在籍する小学生4,503名を対象に,学級において自記式無記名質問紙調査を実施した。調査期間は平成21年9月~10月であった。対象のうち,4,338名から質問紙を回収し分析に用いた。本年度の調査内容は,身体・精神的自覚症状,抑うっ症状,心理社会的学校環境(学校満足,規則,級友サポート,先生サポート,親サポート,過剰な期待,勉強プレッシャー等),健康習慣,地域環境,社会経済的変数,人口統計学的変数等から構成される。これまでの解析で明らかになったことは,以下の通りである。1)小学生の健康関連事象の級内相関係数(ICC)を算出したところ,学校レベルでは0.6%~5%,学級レベルでは1%~19%とある程度の値を示した。先生サポートのICCが学校・学級レベルとも最も大きかった。本知見は昨年までの中高校生の知見と同様であった。2)抑うっ・自覚症状と心理社会的学校環境要因との相関係数はいずれも中程度の強さの関連を示し,中でも学校満足が最も強い関連を示した。3)心理社会的学校環境要因の代表として学校満足を用い,小学生の抑うっ症状を説明するマルチレベルモデルを検討した。学校をランダム効果とし,個人レベルの学校満足や共変量および学校平均から求めた集団レベルの学校満足を同時投入したところ,児童の個人レベル変数を制御した後も,学校レベルの学校満足が個人レベルの抑うつに関係していることが明らかになり,いわゆる文脈効果の存在を示唆した。
|