研究概要 |
研究の目的は,小・中・高校の児童生徒を対象として,個人の健康状態および問題行動に個人レベルおよび集団レベルの心理社会的学校環境要因がどのような影響を及ぼしているかについて明らかにすることであった。 平成19年度は沖縄県那覇市の全公立中学校17校の1~3学年(計102学級)に在籍する中学生3,733名を,平成20年度は沖縄県全域の全日制県立高等学校29校の1~3学年(計87学級)に在籍する高校生3,248名を,平成21年度は沖縄県全域の公立小学校31校の第5・6学年(計132学級)に在籍する小学生4,503名を対象に,学級において自記式無記名質問紙調査を実施した。本年度は,これらの結果をまとめて学術論文や学会発表等で公表した。全体的な研究成果は以下の通りである。1)児童生徒の健康指標(抑うつ症状や危険行動など)における学校・学級レベルの級内相関係数を算出したところ,ある程度の大きさを示し,これらの学校・学級間分散はばらついていることが示された。2)児童生徒の抑うつ症状と心理社会的学校環境要因との間にある程度の強さの相関関係がみられ,中でも学校満足が最も強い関連を示した。3)高校生の危険行動を説明するために,心理社会的学校環境要因の代表として学校満足を用い,生徒と学校の2レベルのマルチレベル分析を行った。学校をランダム効果とし,個人レベルの学校満足および学校平均から求めた集団レベルの学校満足を同時投入したところ,個人レベル変数を制御した後も,集団レベルの学校満足が個人レベルの危険行動に関係しており,いわゆる文脈効果の存在を示唆した。同様に,高校生の喫煙・飲酒行動と個人・集団レベルの一般的信頼感との関連をマルチレベルモデルで検討したところ,個人レベルの信頼と喫煙・飲酒との関連が認められた。集団レベルの信頼と喫煙との関係は決定的ではなかったが,飲酒との関係はみられなかった。
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