研究概要 |
ストレスマネジメント教育の特徴は,ストレッサ-によってもたらされる直接的なストレス反応の低減のみならず,ストレッサ-に対する耐性力を高めることを目指すところにある。これは,さまざまな避けがたいストレッサ-に直面しても,その環境にうまく適応できるという意味において,心理学的な立場からの「生きる力」の育成に具体的に寄与できると考えられる。そこで本研究においては,児童生徒を対象として,認知的介入,行動的介入を基盤としたストレスマネジメント教育を実施し,その効果の検討を行うことを目的とした。また,介入対象は,小学生,中学生,高校生,およびその教師とし,それぞれを対象とした基礎研究を踏まえ,介入的実践の効果検討を行うこととした。まず,小学生を対象とした実践においては,行動観察による集団アセスメントを踏まえた社会的スキル訓練を行い,概ね良好な介入効果が得られた。次に,中学生を対象とした実践においては,攻撃行動を対象として,自己の状態に適合したコーピングスキルの獲得を目指した認知的再体制化の訓練を行い,概ね良好な介入効果が得られた。また,高校生を対象とした実践においては,包括的なストレスマネジメントパッケージによる授業を,年間を通して実施し,授業の理解度,日常生活への実践の程度,実際に用いるコーピング変化などを検討した結果,概ね良好な介入効果が得られた。最後に,教師を対象とした実践においては,ストレスマネジメント教育のような心理的介入に関する教師の受容度をタイプ別に分けて研修による実践を行ったところ,その効果に差異が見られた。以上の結果を総合すると,認知行動的アプローチによるストレスマネジメント教育は,児童生徒の生きる力の育成に概ね良好な効果があるが,教師を含めた学校環境の要因の影響を受けやすいことが明らかにされた。今後は,それらの問題点を踏まえたプログラムの改善が必要である。
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