本研究は、福祉援助職のメンタルヘルスの実態と社会福祉事業者のメンタルヘルス対策の現状を明らかにした上で、福祉援助職のメンタルヘルスの維持・向上を図り、質の高い利用者支援を提供していくために必要な、労働環境や支援体制等のあり方について示すものである。平成19年度は、対人援助職のケアに関する研究を行う団体、施設職員のメンタルヘルスに関する調査を実施した団体メンタルヘルスに関する研究・研修を実施する団体、メンタルヘルスに関する研修を実施している福祉専門職団体、メンタルヘルス問題を抱える社会福祉法人、メンタルヘルス対策に取り組む社会福祉法人の計6箇所と、過去にメンタルヘルス不全を経験し、現在も福祉施設に勤務する個人から聞き取り調査を実施した。聞き取りから、社会福祉の仕組み・制度等の福祉援助職を取り巻く環境に変化が起こり、その結果、過重労働・精神的なストレスなどが原因でメンタルヘルス不全にみって休職・退職する職員が増えている現状が見えてきた。本人の職業生活のみならず、生活全体を大きく変化させる結果となっている。また、事業者にとっては、有能な職員を失うことになり、残された職員の加重負担を招き、結果として、更なるメンタルヘルス不全者を生むという事態も起こっている。今後さらに実態を詳細に明らかにする必要がある。このような深刻な現状に対して、事業者である社会福祉法人、専門職団体、メンタルヘルスの専門団体等が、EAPの導入、職員や施設長向けのメンタルヘルスに関する研修等の取り組みを始めている。このような取り組みの効果や重要性を探ることも、今後の研究課題である。
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