研究概要 |
小児期メタボリックシンドローム(MetS)の診断基準の基礎となる生化学指標、アディポサイトカイン、凝固線溶系指標の標準値を確立することを目的として、茨城県J市のA小学校4年生71名とB中学校53名を対象としてMetS健診を行った。はじめに市の教育委員会と学校関係者に小児期からのMetS診断と介入の重要性を説明し、保護者のインフォームドコンセントが得られた児童生徒を対象とした。身体計測項目は身長、体重、BMI、腹囲、血圧、心拍数とし、血液検査項目は生化学指標: HDL-C、TC、TG、空腹時血糖・インスリン、ALT、尿酸、高感度CRP、3)アディポカイン:アディポネクチン、レプチン、4)凝固線溶系指標:フィブリノーゲン()、プロテインC・S抗原、凝固因子活性(FVII,FVIII,FX)、von Willebrand因子(vWF)、PAI-1とした。検診当日は空腹時採血を徹底し、日内変動の影響を避けるため、すべて朝9:00〜10:30に採血した。検体はその場で遠心分離し、測定まで冷凍保存した。小学生、中学生ともにMetS診断の基礎となる腹囲と相関したのはFVII、FX、Fbg、PAI-1、インスリン、レプチン、高感度CRPであった。また、線溶系指標のPAI-1はTG、HDL-C、インスリン抵抗性の指標のみならず、ほとんどのアディポカインと有意の相関を示した。この結果は、小児期でも腹部肥満がみられる場合はインスリン抵抗性のみならず、アディポカインの変動、凝固促進、線溶低下の傾向があることを示唆している。今後、対象数を増やすとともに肥満児を対象とした検討が必要であるが、本研究における生活習慣病関連血液データは小児期MetSのスクリーニングに役立つことが期待される。
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