研究概要 |
本年4月に開始されたメタボリック検診において内臓脂肪の過剰蓄積は生活習慣病の発症基盤とされ,如何に内臓脂肪を減少させるかが重要である.既にメタボリックシンドロームの診断基準が選定され,内臓脂肪面積(VFA)が100cm^2以上あることを必須項目と定めている.その際,VFAの客観的な評価法が必要であり,現在のところX線CT法による臍高部の画像診断が最も信頼しうる指標とされている.本研究では,X線CT法による画像診断で得られたVFAを妥当基準とし,多周波インピーダンス値を適用し非侵襲的にVFAを推定するための方法の開発を行った.対象者は男性64名、女性36名の計100名である.インピーダンスの周波数は5kHz,25kHz,50kHz,100kHz,250kHzの5種類を用いた.測定部位は被験者の電流電極-検出電極間距離が7cmを電極配置A,10cmを電極配置Bとし電極間距離を3cmとして広がり抵抗を観測する3箇所を実施した.測定の姿勢は臥位,座位,立位の3種類である.なお,解析には男女を区別せず,n=100として解析を行った.各項目の男女の平均値は年齢(29.9歳,31.8歳),BMI(24.0,21.0),VFA(67.2cm^2,27.2cm^2),皮下脂肪面積(106.5cm^2,107.0cm^2)であった.重回帰分析の結果,測定条件が仰臥位、周波数100kHz、検出電極と電流電極の間が10cm(電極配置B)の時に最も高い相関(r=0.898)が得られた.回帰式はVFA=5.48×腹部縦径+224.46×ウエスト・ヒップ比-15.13×性別+1.75×電気インピーダンス値+0.59×年齢-267.57であった.またVFA100cm^2未満と以上に分けた時の一致率は98%であり,偽陽性1名,偽陰性1名であった.今回は仰臥位,電極配置B,周波数100kHzという測定条件で,精度の高い推定値が得られた.次年度に関しては対象者数を増加し,得られた推定式を用いて交差妥当性とBrand and Altmanのplotから信頼性の確認を行う予定である.さらにクロス表を用いて実測値と推定値の感度,特異度を求め,VFA100cm^2以上の誤判別の要因についても精査したいと考えている.
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