研究概要 |
内臓脂肪の過剰蓄積が生活習慣病を惹起する要因の1つであることが報告され,生活習慣病の予防には内臓脂肪量の軽減が重要とされている.従って内臓脂肪に関しても血圧や血液生化学データと同様に簡便かつ正確な測定値の収集が望まれる.本邦での内臓脂肪面積(VFA)の正常範囲は腹部のX線CT法による画像診断で脂肪面積が100cm2未満と定められている.現在のところX線CT法による臍高部の画像診断が最も信頼しうる指標とされているが,放射線の被曝,コストや医療行為であるなどから簡便に測定することは困難である.また,簡便法として腹囲の測定がおこなわれているが,この値に関しては現在,多くの問題点が指摘されている.本研究ではX線CT法による画像診断で得られたVFAを妥当基準とし,多周波インピーダンス値を適用、し非侵襲的にVFAを推定するための方法の開発を行った.インピーダンスの周波数は5kHz,25kHz,50kHz,100kHz,250kHzの5種類を用いた.測定部位は被験者の電流電極一検出電極間距離が7cmを電極配置A,10cmを電極配置Bとし電極間距離'を3cmとして広がり抵抗を観測する3箇所を実施した.測定の姿勢は臥位,座位,立位の3種類である.対象者数は昨年の100名に本年度の119名を加えた219名である.ただし,重回帰分析として解析に使用した人数は189名,残りの30名は交差妥当性の試験に用いた.本測定と交差妥当性試験の各項目の平均値は年齢(31.0歳,30.5歳),BMI(22.5,22.8),VFA(50.5cm2,45.3cm2),皮下脂肪面積(110.5cm2,119.4cm2)であった。重回帰分析の結果,測定条件が仰臥位、周波数50kHz、検出電極と電流電極の問が10cm(電極配置B)の時に最も高い相関(r=0.871)が得られ,Brand and Altmanのplotにおいても顕著な誤差は見られなかった。回帰式はVFA=2.52x腹部縦径+155.03×ウエスト・ヒップ比-14.98×性別+1.52×電気インピーダンス値+0.66×年齢-197.41であった。また交差妥当性で得られた相関係数はr=O.881であり,精度の高い推定値が得られた。
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