平成20年度に実施した研究は、前回の科研費による研究で開発した上肢による反応動作、すなわち「視覚→判断→命令→上肢の動作」を可能な限り速くするトレーニングのための装置、および今回の科研費で開発した下肢による反応動作トレーニング装置を用いて「視覚→判断→命令→下肢の動作」のうち、共通する「視覚→判断」部分の残存効果や転移効果について比較・検討したことである。平成19年度には残存効果についてすでに検証しており、平成20度は上肢で獲得したトレーニング効果がトレーニングを実施しない下肢にまで転移するかどうかに絞って検討した。トレーニング装置の選択課題を前回と今回とで比較すると、前回の方は選択肢が複雑であり難易度が高い。 被験者をふたつのグループ、すなわち上肢→下肢トレーニンググループおよび下肢→上肢トレーニンググループに分け、それぞれに上肢のトレーニングをしてから下肢のトレーニング、下肢のトレーニングをしてから上肢のトレーニングを実施させた。前回の研究で残存効果は2週間の連続トレーニングで獲得することが可能であったことから、本研究でも各期間は2週間とし合計4週間とした。トレーニング期間中の記録を検討すると、下肢から上肢に移行したグループより、上肢から下肢に移行したグループのほうがトレーニング効果の転移が顕著であった。 このことは、上肢による反応時間を速くするためのトレーニングを実施するだけでも下肢による反応時間の動作が速くなることを示唆している。つまり、一度複雑な選択課題をすばやく行うための脳内運動プログラムが形成されと、それは単純な選択課題に対しては転移効果として反映しやすくなると考えることができる。
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