研究概要 |
【目的】本研究は、頸動脈超音波検査による内中膜複合体厚(IMT)肥厚と重心動揺により評価された転倒危険性等との関連を検討することを目的として実施された。【方法】本研究の調査対象者は、滋賀県K市の地域住民からの無作為抽出による60歳以上80歳未満者で、平成17年4月から滋賀医科大学で実施されている循環器疾患危険因子に関する地域住民を対象とした疫学研究(代表:上島弘嗣)に参加した人とした。本調査に協力が得られたのは685名で、そのうち、脳卒中を有する者、パーキンソン病を有する者、自力立位不可能な者計40名を除外した。調査対象者中41名にデータ欠損を認め、604名を本調査の分析対象者とした。 【結果】分析対象者の年齢(平均値±SD)は69.9±5.5歳で、男性は84.3%を占めた。分析対象者を65歳未満(n=153)と65歳以上(n=451)に層化しIMTと重心動揺を検討したところ、65歳未満の対象者の平均IMTが823.1±176.9μmであるのに対し、65歳以上では903.3±184.4μmと高齢者のほうが肥厚している傾向にあった。年代別重心動揺パラメータは、開眼時外周面積は65歳未満2.3±1.2cm^2に対して65歳以上では2.9±1.4cm^2と有意に広く(p>.001)、開眼時総軌跡長は65歳未満45.4±12.9cmに対して65歳以上55.5±17.7cmと有意に長かった(p>.001)。また、閉眼時においても開眼同様の傾向を示した。IMTと重心動揺との関連を年代別に検討したところ、65歳未満および65歳以上の両群でIMTと重心動揺の各指標との有意な相関は認めなかった。IMT四分位の重心動揺の各指標を年代別に検討したところ、65歳未満ではIMTと重心動揺の各指標との関連は認めなかったが、65歳以上ではIMTが大きくなるに伴い開眼時外周面積は大きく、総軌跡長は長くなる傾向を認めた(それぞれ, p for trend=0.030, p for trend=0.001)。IMTと開眼時総軌跡長との関連については水準内での年齢調整した解析を行っても同様の傾向を示した(p for trend=0.041)。
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