メタボリック症候群の概念の普及とともに、生活習慣病予防の重要性がクローズアップされてきている。生活習慣病の進展による血管病変=動脈硬化は、心血管病変の原因として極めて重要であるが、その進行は幼少時、若年時からすでにはじまっていることが近年の研究から明らかにされてきており、若年世代からの動脈硬化の予防が今後ますます重要になってくると考えられる。その一方で、若年世代における食生活の乱れや運動不足に伴う肥満割合の増加が大きく取り上げられるなど、この世代における栄養状況の改善を通じた、生活習慣病の予防が重要課題となっている。そこで本申請では、日本人若年者を対象として動脈硬化関連因子について分子疫学的調査を行い、エビデンスに基づいた若年時からの栄養指導、保健指導による生活習慣病の予防を行った。対象者の身長、体重に加えて体組成計を用いて体脂肪率、筋肉量、推定骨量、さらに基礎代謝量、腹囲の測定を行い、空腹時採血を行い、赤血球、血漿、血清を分離し、レプチン・アディポネクチンといったアディポサイトカインやグレリン等の測定を行った。さらに超音波検査によって頸動脈内膜中膜複合体厚を、さらに血圧脈波装置によって心臓足首血管指数と血圧の測定を行い、一日度運動活動量についても加速度計を用いて評価を行った。その結果、血清中のレプチン・アディポネクチン比は他の関連因子と独立して頸動脈内膜中膜複合体厚と有意に相関することが明らかになり、またグレリンは運動活動量に関連することが明らかになった。以上より、これらの指標が今後の若年者における動脈硬化の指標として有用であることが示唆された。
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