研究概要 |
これまでに得られた機能的体力測定結果(2600人)から全身持久性(12分間歩行),筋力(アームカール,チェアースタンド),下肢の柔軟性(シットアンドリーチ),バランス(ファンクショナルリーチ)は50歳を基準に加齢に伴いおよそ1〜1.6%/年の低下率が示された。上肢の柔軟性(バックスクラッチ)の低下は,0.2〜0.3%/年と小さかった。一方,敏捷性および動的バランス指標であるアップアンドゴーは,3.7〜49%/年とその低下率が大きかった。対象者(n=277,2市1町22地区)が在住する近くの公民館等を利用し,地域型運動(レジスタンス,バランス,柔軟性およびエアロビクスの複合型)を指導したところ,短期的(12週間)には機能的体力が上肢の柔軟性を除きすべてに有意な改善を認めた。その改善率は,敏捷性が5%,下肢の柔軟性と全身持久性が6%,筋力が11〜12%の範囲で示された。短期的教室終了後は特定の指導者がなく住民同士の主体的運営によって教室が継続されてきたが,1年から6年後に再測定を試みたところ加齢に伴う低下率が小さく,運動効果が維持されていた。とくに筋力,筋パフォーマンスへの効果が明らかであった。地域型運動を週2日継続している地域では短期的運動教室終了後と6年後を比較してもさらに筋力(上肢の筋力9%↑,下肢の筋力7%↑)が増加しており,有意な低下はバランスと全身持久性のみであった。週1日の地域型運動の有効性が示されたが,週2日実践が行うことが可能であればさらに良好な結果が期待できるものとみられた。地域型運動はフォローアップ調査から筋力への効果が顕著であった。全身持久性とバランスは運動方法の質的または量的な側面からの検討が必要であるが総体的にみれば地域在住高齢者に対する本運動様式(週1日,90分間,4種類の複合運動)の導入の有用性が示唆された。
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