研究概要 |
【目的】糖尿病患者を対象に,遺伝子多型解析を応用したテーラーメイド栄養指導を行ない,その効果を検証した. 【方法】2型糖尿病患者のβ3AR(Trp64Arg), UCP1(A-3826G), MTHFR(C677T)およびAGT(Met235Thr)の4種類の遺伝子多型を解析した.同意の得られた115名を層別に介入群と非介入群の2群に分け,介入群の対象者には野菜を最初に炭水化物を最後に摂取する食品の摂取順序および遺伝子多型に応じたテーラーメイド栄養指導を実施し,介入前と介入後の血圧,BMI, HbAlc,葉酸,VB_<12>, Hcyを測定した。また,尿中酸化ストレスマーカーとして8-OHdGとイソプラスタンをELISA法にて測定した。介入方法は,野菜を先に食べる順番を守ること,肉よりも魚の摂取,適宜な運動の指導を介入群全員に行い、UCP1(A-3826G), β3AR(Trp64Arg)遺伝子多型保持者には摂取エネルギー量のコントロールと活動量のアップを,AGT(Met235Thr)では塩分の摂取制限,MTHFR(C677T)では緑黄色野菜の積極的摂取を特に指導した。 【結果及び考察】テーラーメイド栄養指導実施後、血清葉酸値は,介入群では有意な増加がみられたが,非介入群では有意に低下した。血漿Hcy及びVB_<12>では変化が見られなかった。しかし,葉酸値の上昇にも関わらず,Hcyの低下がみられなかったのは,ベースラインでのHcy値が基準値内であったため,抑制的な作用に至らなかった可能性が考えられる。尿中イソプラスタンは介入群,非介入群とも介入後に有意な低下がみられたが,8-OHdGは両群とも変化はみられなかった。イソプラスタンの非介入群における低下には,研究の説明と同意,及びそれに伴う採血,採尿などの交絡因子が患者の行動に影響した可能性が考えられた。
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