メタボリックシンドロームは糖尿病や心血管病など生活習慣病の根幹をなす重要な病態と考えられているが、従来から試みられている予防介入対策は主として食事、運動、減量に視点を置いている。地球温暖化現象が深刻な環境問題として取り上げられているところであるが、国民一人ひとりの意識に強く働きかけて自主的なCO2削減策行動に結び付けていくことが肝要である。しかし、人体からのCO2排出とエネルギー代謝について論及したものは極めて少ない。そこで、肥満対策および予防的アプローチが地球温暖化という喫緊の課題を含んだ綜合的な環境対策にも寄与できるのでないかと考え、その実行可能性を探索するための予備研究を行った。県下のS企業事業所をモデル地区に選定し、職場健康管理室の協力のもとに生活習慣に介入する新しい省CO2型モデル保健事業を展開した。健診受診者の中からメタボリックシンドローム合併者19名および非合併者20名を抽出し、熱量計MedGemを用い酸素摂取量から安静時代謝率およびCO2排出量を算出した。安静時代謝率はHarris-Benedict式による推定値と個々の例で+26%から-33%の差を認め、非メタボ群の推定値はより低くでることが示された。年間安静時CO2排出量予測値は非メタボ群に比してメタボ群で+8.6%の増大を示した。非メタボ群に対するメタボ群での年間総CO2排出量は平均17kgの過剰と予測され、この値は身近な温暖化対策として1人当たりの年間ガソリン消費の2.9%節減に相当することが判った。
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