研究概要 |
本研究は皮膚冷刺激の手法を用い,高齢者や運動に制限のあるヒトに低運動強度でも効果的に神経系・筋系を改善し,安全で,負担の少ない肥満解消を目的とした運動方法を確立しようとするものである。平成19年度はまず有酸素運動と筋力増大に貢献する運動を同時に行えるように下肢大筋群にあたえる皮膚冷刺激の温度設定ならびに低強度による運動の実験検証をおこなった。さらに,低運動強度での随意運動での皮膚冷刺激時における酸素摂取量および動員筋肉活動におよぼす影響を比較検討した。実験では両側の大腿四頭筋上に皮膚冷刺激装置をセットして冷却しながら低強度での自転車漕ぎを実施した。その結果,motoneuronsの閾値張力にもっとも影響を及ぼすとされる25-26℃に皮膚温を維持するには冷却装置を5℃にセットし,予備冷却2分後に運動を実施するのが適当であった。我々独自のプロトコルを用いた皮膚冷刺激トレーニングを肥満傾向のある被験者3名に対して6週問実施した。その結果,持久能力を示すAT値が上昇すると共に下肢伸展筋出力は増加した。さらに,In BODYによる身体組成測定では,下肢筋肉量の増加傾向と内蔵脂肪量の減少傾向が観察された。以上の結果より皮膚冷刺激下における低強度の有酸素運動は神経的な適応を改善し,基礎代謝を増大させる筋肉量と有酸素能カアップに貢献すると考えられる。今後は被験者の数を増やしトレーニング効果を検証すると共に心臓自律神経活動の変化および体液に及ぼす影響についても検討を加える予定である。
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