末梢循環障害をきたす閉塞性動脈硬化症は、歩行に伴う下肢筋肉痛による身体活動の制限が強いられる。階段昇降や小走りでさえも下腿筋のこわばりで一時的休息をとらざるをえない状況に陥り、結果的に体力低下や日常生活行為への影響が認められる。先行研究において、これら有病者への下肢トレーニングは明らかな連続的歩行距離の延長を促し、身体活動能の向上は下肢血行動態の変化が関与している事が示唆される。これらは血管内皮機能の改善、側副血行路の発達あるいは筋代謝の改善が考えられるが、未だ不明な点が多い。数週間のトレーニングによる「歩行距離の延長」は定期的な運動の(慢性的)効果と考えられるが、急性運動時における循環調節・血行動態の検討はほとんどなく、運動における活動筋循環動態を把握することは有病者へのQOL向上への糸口として重要であると考えられる。そこで、末梢循環障害をきたす閉塞性動脈硬化症保有者(Fontaine II度)を対象に、両下肢それぞれにおいて多段階負荷等尺性片側膝伸展運動中の下肢血行動態を検討した。足関節-上腕血圧比が0.9以下の下肢を疾病下肢、対側下肢を対照肢とした。運動時下肢血流は大腿動脈とし、超音波機器にて血流量を計測した。安静時において、疾病下肢血流量は対照下肢と比較して少ない傾向を示した。しかしながら、運動強度に対する下肢血流増加は、対照下肢側に比べ疾病下肢側において大きい傾向が認められた。疾病下では安静時のみならず運動中の骨格筋循環に与える影響が示唆され、本研究では実際の運動中の血行動態を評価することで、血行障害が酸素運搬にどのように反応しているかを示す基礎的データと考えられる。疾病下肢では安静時における血流量は大腿動脈においては低値を示すものの、罹患期間や他の要因により側副血行路により代償されている場合も考えられ、疾病下における運動と循環調節の解明が重要と思われる。
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