本研究の目的は、変形性膝関節症などにより膝痛を抱えている高齢者の痛み自己管理能力を高めるための膝痛改善プログラムを開発するために、まず痛みや痛みに伴う活動制限を規定する要因(痛み自己管理に対する変容ステージ、セルフ・エフィカシー、対処スキルなど)の相互関連性について検討し、痛み自己管理モデルを構築することである。また、それらの成果を活かし、膝痛を有する中高齢者に対する包括的な痛み改善プログラムを開発し、その評価を行うことであった。 平成19年度には、膝痛を有する地域在住中高齢者を対象に、痛みや痛みに伴う活動制限を規定する要因を解明するための調査研究を行った。その結果、高齢になるにつれて痛みの程度が強くなり、そのために活動制限も大きくなっていた。また、強い痛みを感じている人ほど、願望思考、破滅思考、医薬行動といった痛み対処方略を頻繁に採用し、結果として活動制限が強められていることが分かった。 一方、このような膝痛を抱える地域在住中高齢者を対象に、通信教育による膝痛改善プログラムを開発し、その効果を従来からある教室型の膝痛改善プログラムと比較検討した。その結果、両プログラムともに痛みの程度、活動制限は改善された。また、痛み対処方略に関しては、通信型プログラムでは注意の転換、願望思考、除痛行動、医薬行動が、教室型プログラムでは自己教示、破滅思考、除痛行動、医薬行動が、有意に得点が下がっており、痛みの改善により、これらの対処方略を採用しなくなったことを反映したものと考えられる。 平成20年度はこれまでの成果を活かし、膝痛のために活動制限が大きい中高齢者に対してさらに効果的なプログラム(たとえば、水中運動など)を開発し、その効果検証を行う必要がある。
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