タウリンと肥満の関連を明らかにするため、タウリン合成系の律速酵素システインジオキシゲナーゼ(CDO)に着目し研究を行った。抗肥満モデル動物(魚油群および共役リノール酸添加群)においては脂肪細胞のサイズが有意に小型化し、同時にCDOのmRNA発現量は増加傾向を示した。一方、高脂肪食を摂取し脂肪細胞が大型化したマウスの脂肪組織でのCDO発現量は減少していた。さらに、CDOのcDNAを脂肪組織特異的に2-3倍過剰発現させたトランスジェニックマウスを作成した(FAT-CDO、Aライン)。FAT-CDOトランスジェニックマウスの血中のタウリンレベルは、野生型マウスとの間で有意差は認められなかった。また、普通食下における体重、脂肪組織重量にもトランスジェニックマウスで減少は認められなかった。 さらに、マウスで認められた肥満状態におけるタウリン欠乏状態がヒトにおいても認められるか否か検討した。ヒト肥満者44例の血清タウリンレベルを測定したところ、肥満の程度と血中タウリンレベルには相関関係は認められなかった。しかしながら、肥満治療後の血中タウリンレベルは治療前に比べ軽度に高値を示す傾向が認められた。 以上の結果から、脂肪組織のタウリン合成は肥満の程度と関連する可能性が示唆されたが、タウリンが脂肪組織におけるタウリン合成の増加がどの程度肥満改善に寄与しているのか十分に明らかには出来なかった。また、ヒト肥満者でのタウリン欠乏状態に関しては今後BMIが低い集団との比較において明らかにしていく必要がある。
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