本研究は、杢目縫い絞りの柄の発現メカニズムを明らかにし、コンピュータによって柄を創造するシステムを構築することを目的とした。 杢目縫い絞めは白布査平縫いして糸を引き締めた後に染色すると、縦方向に杢自状のすじが現れる絞り技法で、柄は引き締めた時に生じるひだが染色されて発現する。したがって、杢目縫い絞りの柄は縫われた針目の位置に依存する。針目位置から柄を求めるアルゴリズムを確立し、それに基づいて柄を予測するプログラムを作成レた。作成したプログラムを用いて、出現する可能性にある5種類の針目を人工的に作り柄の予測をおこなったところ、全ての場合で柄の予測が可能であった。 熟練者3名と素人6名が作成した杢目縫い絞りのサンプル9枚について、針目位置を測定し、それらを用いて柄のシミュレーションをおこなった。実際の柄には濃く染色されている部分とにじみにより淡く染色されている部分がある。柄の濃淡の幅を測定した結果、濃い柄の幅は針目間隔に対してサンプルごとに異なる切片を持つ等しい傾きの直線で表すことができ、淡い柄の幅はサンプルにかかわらず1つの直線で表すことができることがわかった。柄の予測プログラムに針目間隔と柄の濃淡の関係を組み込んでシミュレーションをおこなった結果、実際に近いイメージの柄を得ることができ、柄の正解率は平均95%であった。
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