研究概要 |
玄人3名と素人6名が作成した杢目縫い絞りのサンプル9枚について、周辺分布、パワースペクトルおよびフラクタル次元を用いて杢目縫い絞りの柄の評価を行った。 周辺分布について、玄人、素人ともに全ての試料において水平方向より垂直方向が大きく、柄が主に垂直方向であることがわかった。また、色階調の平均値および水平方向の標準偏差は、試料毎にばらつきがあるものの、玄人、素人ともにほぼ同じ程度の値を示した。垂直方向の色階調の標準偏差については、玄人の柄は試料Gを除いた素人に比べて、小さい値を示した。フラクタル次元について、玄人の柄は、周辺分布と同様に試料Gを除いた素人に比べて、同じかそれ以上の値を示した。また、パワースペクトルについては、全ての試料で低周波域での強い周期性と高周波域までの半径方向の分布の広がりが見られた。特に、玄人の柄では、素人に比べより高周波までの広がりが見られるが、中周波域から高周波にかけての特定の周期性が弱く、また、テクスチャの方向を示す円弧方向の幅も狭い。 これらの結果から、玄人の柄は素人の柄に比べ全体の方向が垂直方向を示し、色階調のばらつきが少なく細かく複雑であることがわかった。これは玄人が素人に比べ,針目間隔の平均値が小さく,そのばらつきも小さい平縫いを各行で独立しておこなっているためである。
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