研究概要 |
目的と方法:家族科で育てる力を生活力とし、実践の実態、課題意識、解決のための家庭科期待の3点で学習効果を把握してきた。その際、学習項目との対応のために日本、アメリカ、カナダの学習指導要領や教育書から82項目の小カテゴリーを設定していた。履修形態(学習指導要領告示年度)の違いによる対象を4つのコーホート:調査時の高校生(1998,99年度告示)、大学生(1989年度告示)、成人(1977,78年度告示)、成人(1969,70年度告示)にした。さらに海外(カナダ、韓国)で国内と同様の調査を行った。 結果の概要:実践の実態では「家族とのよい関係づくり」をはじめとする家族家庭、人間関係など「ひと」カテゴリーにおいて高く特徴的であった。加えて「自己概念」「意思決定」も高かった。成人女性では「衣生活」「食生活」カテゴリーが高く他のコーホート、男性との違いがあった。カナダの大学生では「自己や他者理解」、韓国では「家族の形の多様性」「資源の有限性」について高かった。課題意識について日本、カナダの大学生に共通する内容として「キャリア設計」「消費・経済」「保育」があげられ「環境・資源」「食生活」が続いた。これは日本の高校生にも共通していた。成人コーホートにはこれらは見られず「家族理解」「高齢者介護」などであった。家庭科への期待では、成人コーホートの低さが顕著であった。家庭科履修経験の無い世代・男性の家庭科の認識不足、機会があっても「生かされていない」学び方の問題が浮き彫りになった。家庭科を男女共学で学んできた大学生の生活力は「健康管理、家族・家庭、環境・資源、消費・経済、保育」と「もの、ひと、こと」に広がっていることがわかった。現代的な課題に対する能力育成を家庭科に期待しており、家庭科での学習の可能性を認めていることを示していた。日本家庭科教育学会大会、例会で発表し、冊子報告書を作成した。
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