研究概要 |
児童・生徒の予備実験として,大学生15名(男性10名,女性5名)を対象にして,学校用家具使用時の2次元動作分析を行った。使用した机・椅子は,JIS規格の2号から7号までの号数で高さの調整が可能な木製机・椅子である。被験者の身長から割り出した適正な机・椅子の高さ(適と略す)を基準とし,その高さから1号だけ高い高さ(高と略す)と,1号だけ低い高さ(低と略す)の机・椅子を使用し,この3段階に高さを変えて実験を行った。被験者の頭頂点,耳介上部点,肩峰点,橈骨点,茎突点,転子点,脛骨点,外果点,足先点の9カ所に反射マーカーを貼り付け,学校での学習場面を想定して,文字を書くという着座時の動作と,着座姿勢から直立姿勢への立ち上がり動作を被験者に行ってもらい,デジタルビデオカメラで作業の様子を身体の左側面から撮影した。その後,2次元速度・変位ベクトル計測ソフトを用いて,モーションキャプチャによる身体の各部位の変位と角度を計測し分析を行った。また,3段階の高さの違いによる差を検証するために,反復測定による一元配置の分散分析を行った。 この実験の結果,着座時に机で文字を書く動作において,腰と膝の角度では低と適および適と高で有意差が認められ,高さが高くなるほどそれらの角度は開く方向で増加し,低の時に最も上体が前かがみなることがわかった。また,立ち上がり動作において,腰と肩の変位では低と高で有意差があり,高さが高くなるほどそれらの変位量は減少した。さらに,立ち上がり動作において,腰の角度および水平線上からの腰の角度を調べると,低と適,適と高で有意差が認められ,低の場合に腰の角度が小さく閉じて上体が前かがみになり同時に上体を最も水平線近くへと伏せていた。立ち上がり動作時の腰の変位量と腰の角度の変化量では,適と高の差よりも適と低の差が大きいことから,低の時に腰に多くの負担がかかることが予想される。
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