研究概要 |
小学校4年生10名(男性5名,女性5名)および中学校1年生10名(男性5名,女性5名)を対象にして,学校用家具使用時の3次元動作分析を行った。被験者の身長から割り出した適正な机・椅子の高さ(適と略す)を基準とし,その高さから1号だけ高い高さ(高と略す)と,1号だけ低い高さ(低と略す)の机・椅子を使用し,この3段階に高さを変えて実験を行った。被験者の身体の関節7カ所に反射マーカーを貼り付け,学校での学習場面を想定して,文字を書くという着座時の動作,着座姿勢から直立姿勢への立ち上がり動作および机を持ち運ぶ動作を被験者に行ってもらい,2台のCCDカメラによる3次元動作の計測を行った。その後,モーションキャプチャによる身体の各部位の変位と角度を計算し分析を行った。 この実験の結果,着座時に机で文字を書く動作において,腰の角度では小学生で低と高の間で分散分析による有意差が認められ,中学生では低と適,低と高の間で有意差が認められた。すなわち,机・椅子の高さが低いほど腰の角度が小さい値を示し前かがみの姿勢になる傾向がある。立ち上がり動作において,腰の角度では小学生で適と高,低と高で有意差が認められ,中学生では低,適,高の間で有意差が認められた。また,中学生では机・椅子が低くなるほど腰を曲げる角度が急増し,その増加分が腰に負担をかけ疲労の原因になると考えられる。このことは,中学生の腰の変位が低のときに特に大きいことからも裏付けられる。机の持ち運び動作において,小学生では後方に移動する場合は身長が高い人ほど机の上下方向の揺れが小さくなったが,中学生では有意差が認められなかった。また,身体部位別の主観的疲労度をアンケート調査した結果,小学生では低のときに各部位の疲労度が全体的に高くなり,中学生でも低のときに腰と足を中心に疲労を強く訴えていた。
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