研究概要 |
この研究は,高齢期を迎えてもそれまでの生活の形や内容を大きく変えることなく,慣れた家庭や地域社会で生活を持続するために,どのような住民相互のまた社会サービス上の工夫が必要であるかについて,またその前提となる市民の経験の蓄積また学習の展開の重要性について実証的に検討しようとするものである。今年度は以下のことを行った。 1) 主題に沿った諸文献,および実際の事例に関する映像資料を収集し検討した。 2) 私たちの主題である地域福祉システムをどう構築していくのかについては,これまでの研究経過から,先進的な福祉事業体の存在,自治体行政や地域の公的医療機関がもつ志向性,地域の住民参加のありかたが大きな影響力を持つこと,中でも医療機関や医師の役割の大きさが示されている。その事例として重要と思われる3つについて事例調査をした。北秋田市(鷹巣)で進められていた事例は行政施策上の困難に遭遇し,その報告検討会に参加し資料収集を行って実際を把握した。また国保病院(公立みつぎ総合病院)を中核に先進的な地域医療・福祉を長く展開している尾道市御調地区,高い理念をもつ福祉事業体(社会福祉法人新生会「総合ケアセンター・サンビレッジ」)を核に地域福祉を充実している岐阜県池田町の事例を調査した。また日本生命財団の高齢者福祉に関わるシンポジウム(「高齢社会をともに生きる」大阪国際交流センター,12月)に参加した。計画した茅野市等での地域社会調査は地域医療への視点を再考して今後実施することとした。 3) 福井市内で活動するNPO団体の活動に参加し,ともに学習活動を進めながら,介護保険の改訂に伴う諸問題を検討する専門家の講演会の企画に参画し,高齢者に関わる医療福祉制度の変化について適切な理解の糸口を得ることができた。
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