研究概要 |
研究目的及び本年度の研究実施計画にしたがい,以下のような研究を行い成果を得た。 1)高齢期福祉では医療看護分野との協働が重要であることを考え,地域医療分野の文献をとくに検討した。 2)長野県茅野市,愛知県高浜市,愛媛県松山市においてさらに現地調査を重ねた。茅野市では基礎集落と各層の学区,高浜市では小学校区における地域形成と高齢期福祉に関する住民活動に注目し,地域を層化した福祉活動の整序における旧来の住民自治活動の機能を検討した。また地域医療における公立病院の役割を考えた。松山市では自治体による積極的な市民活動支援の実際を把握し,地域福祉計画の策定経過への理解を進めた。 3)地域福祉領域での先進事例である尼崎市の「けま喜楽苑」および松山市の「ともの家」を視察した。前者は特養を中核に小規模多機能施設やデイケア施設また訪問介護事業を展開し,ユニット個室型の施設設計を早めに実現している。後者は宅老所から出発してグループホームや小規模多機能施設を展開し,介護労働者の労働環境に配慮しながら重度の要介護高齢者を受け入れている。いずれも私たちが今後直面する諸課題を先取りしている。 4)地域福祉に関わる全国市民団体の研究交流集会(広島および沖縄)や関連学会に参加して発表諸事例に学ぶとともに,在宅福祉に整合的な小規模多機能施設の展開をより活性化していくための制度的課題を理解した。 5)以上の経過また得られた成果から今後の研究課題がより明瞭になり,一部準備段階にある研究内容の今後の展開が期待できる。考えるべき課題の第一は,高齢者の豊かな在宅生活を実現する,身近な利用および入所施設や医療看護を含む社会サービスのありかたと自治体の機能であり,第二には,地域社会住民がなすべきあるいは可能な相互支援のありかたである。高齢期在宅福祉への住民参加の期待は,計画・実践両面にわたっている。
|