研究課題
昨年までに、住居・建築分野における女性参画の実態を解明してきたが、今年度は、生活空間創造における男女共同参画の意義を明らかにするために、主に建築設計業務に携わる男女双方の専門家を対象に、生活体験の仕事への反映に関する調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。(1)男女共に多くの建築設計技術者の仕事には、自身の生活体験が大きく反映している。なかでも、家事・育児等の家庭生活体験は最も直接的に反映しやすい体験である。(2)その生活体験には、明らかな性差が存在する。女性は結婚を転機に多くの時間を家事・育児・介護に費やす生活に転換しているのに対して、男性は結婚前後で大きな変化はなく仕事中心の生活を続けている。(3)一方で、女性建築技術者のなかには、仕事に重点をおくことで、結婚出産を控えている人が多く存在し、子どものいる比率は、男性87.9%に対して、女性は46.5%に留まっていた。(4)仕事の進め方や重点の置き方にも性差が存在する。女性は、使いやすさや環境との調和等を重視するのに対し、男性は、空間のイメージや形を重視する人が多い。これは、多くの女性建築設計技術者の出身学部が住居系学部であることにも深く関わっている。(5)女性建築設計技術者は世間からも生活者の視点を期待され、自身も家庭生活体験を武器に、現状では主に住宅分野で活躍している。以上により、異なる生活体験や視点をもつ男女が、生活空間創造に参画することは空間創造の多様性を保護すること、また、男女ともに妥当な労働環境を保障し、ワークライフバランスのとれたライフスタイルを実現することは、安全で豊かな生活空間創造につながることが示唆された。
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日本建築学会計画系論文集 Vol. 73、No, 625
ページ: 633-640
日本建築学会計画系論文集 Vol. 73、No. 633
ページ: 2443-2451