研究概要 |
初年度の研究結果は「幼稚園・保育所の統合保育の現状と課題」として日本小児科学会雑誌に発表した。平成21年度はダウン症候群の保育・就学・就労・医療の実態を当事者の側から明らかにすることを目的に、統合保育施設卒園生と療育相談外来患者に行ったアンケートをまとめた。学校卒業後の進路や精神的落ち込み・退行等は18歳以上に質問した。ダウン症236人(男135人、女101人)の解析対象者は未就学20人(8.5%)、小学生45人(19.1%)、中学生33人(14.0%)、高校生21人(8.9%)、高等学校卒業以上が117人で全体の約半数となった。95.7%(224/234)の幼児が保育所や幼稚園に通園し、7割以上が療育機関にも通っていた。小学校は通常学級、中学校は特別支援学級就学が最も多く、高等学校へ98%が進学していた。学校卒業後に働いた企業や雇用施設は、通所授産施設が最も多く51.3%(59/115)、次に一般企業が多い(19.1%)。18歳以上の109人中、72人(66.1%)は精神的問題がなかった。それ以外の34%に精神的落ち込みや退行がみられ、男21人、女16人で性差はなかったが、発症年齢は13~35歳と幅広い。全体の6割(131/217)が医療機関を受診し、61.1%(66/108)は医療機関の受診に問題がなく、8割(172/217)はかかりつけ医を有していた。思春期以降小児科から内科へ8割(93/118)が移行できていた。学校卒業後すぐに勤めた就職先が一般企業の場合、その他に比べ就職後の精神的な落ち込み・退行の割合が多く、半数(52.4%,11/21)に問題が生じていた。知的発達が比較的良いと周囲の人間関係の問題を抱える、職業的スキルの要求水準が高い等の理由が考えられ、精神的支援や環境調整が必要である。この結果を小児保健研究に投稿し、日本小児保健学会で発表する。
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