分子量を変えた寒天とゼラチンを用いたゲル試料について、口中に取り込む際の一口量(2ml、5ml)を変え、嚥下終了までの嚥下回数について検討した。一口量5mlの方が2mlよりも、嚥下終了までの嚥下回数への物性の影響は大となった。そこで、以後、官能評価、嚥下時筋活動の測定時の一口量を、5mlと設定することとした。物性を把握した市販プレーンヨーグルトに、寒天A(通常の寒天)、寒天B(分子量を低下させた寒天、攪拌など変形させることで流動性が生じる)、ゼラチン(アルカリ処理)の3種類のゲル化剤を用い、摂食機能回復のリハビリテーションの第1段階である嚥下開始食として用いられる硬さ1×10^3N/m^2、および移行食として用いられることが多い卵豆腐程度の硬さ5×10^3N/m^2に揃えたヨーグルトゲルを調製し、試料とした。いずれの硬さにおいても、寒天Aを添加したヨーグルトゲルは他のゲル化剤で調製したヨーグルトゲルよりも、付着エネルギー、凝集性ともに小さいものとなった。一方、寒天Bヨーグルトゲルの付着エネルギーは大きく、ゼラチンヨーグルトゲルの凝集性は大きいものとなった。破断測定の結果、寒天Bおよびゼラチンヨーグルトゲルのみかけの応力は、変形量の増加とともに顕著に増大した。また、動的粘弾性のひずみ依存性の測定結果より、ゼラチンヨーグルトゲルのトルク(回転に要する力)は、変形量の増大とともに顕著に大きくなることがわかった。若年者による食べやすさの官能評価の結果、いずれの硬さにおいても寒天Aヨーグルトゲルのべたつき感が少ないと評価され、硬さ5×10^3N/m^2のヨーグルトゲルにおいて、寒天Aヨーグルトゲル食塊が有意に口中から喉へ移動しやすいと評価された。若年者による嚥下時筋活動の測定結果、5×10^3N/m^2のヨーグルトゲルにおいて、寒天Aヨーグルトゲルの嚥下時筋活動量は有意に小さく、一方、ゼラチンヨーグルトゲルの筋活動量は大きい傾向を示した。
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