1、咀嚼・嚥下障害患者に滴する食品物性について 嚥下障害患者に対する栄養管理には、多くの実績を有する聖隷三方原病院の5段階食事基準を参考に、クリープメーターで物性測定を行った。重度嚥下障害者に提供している食事(段階1〜段階3)については、既に報告していたが、軽度嚥下障害者や咀嚼機能の低下した者に提供する段階である、段階4は、かたさ15000N/m^2以下、凝集性0.2〜0.9、付着性1000J/m^3以下に分布、段階5は、各々、40000N/m^2以下、0〜1.0、1000J/m^3以下に分布していることがわかった。(日本病態栄養学会誌10(3)269-279 2007) 2、各段階における嚥下食レシピについて 多くの料理に使用する素材である「ジャガイモ」を物性的に食べやすくする検討を行った。スチームコンベクションオーブンでは、蒸気量75%〜100%、温度100℃で60分調理すると他の条件(蒸気量、温度、調理時間)での調理よりも柔らかくなった。しかしながら、嚥下機能の低下した者に対して提供できる物性にはならなかった。そこで、上記条件でジャガイモを加熱した後、ペースト状にし、市販のゲル化剤2種類と酵素入りゲル化剤2種類を添加し、物性への影響を検討した。その結果、酵素入りゲル化剤を添加すると、嚥下障害者に対しても提供できる物性になったが、風味を大きく損なった。 3、段階的な食事に適応した検査食作成について 聖隷三方原病院の5段階の食事基準の物性が明らかになったため、各段階に適応した検査食の作成方法について検討した。液体バリウムを50W/V%に希釈し、各段階の物性に適する市販ゲル化剤の選択と濃度についての検討を行った。その結果、均一な物性(段階1〜段階3:重度嚥下障害者〜中等度嚥下障害者に提供する食事)の範囲に入る作成方法が明らかになった。(日本摂食嚥下リハ学会誌12(1) in press)
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