研究概要 |
咀嚼嚥下障害者の食事の質を高めるため、食事における栄養価などの向上が望まれる。本研究では抗酸化・ラジカル捕捉活性に着眼し、ゲル・ゾル食品にこれらの活性を維持あるいは増強する調理加工方法の確立を目的とする。 抗酸化・ラジカル捕捉活性測定方法は、アゾ化合物をラジカル発生剤に用い、加温と酸素付与により発生したペルオキシルラジカルをルミノール化学発光(chemiluminescence, CL)による発光度の増減にて評価することとした。アゾ化合物として、水溶性の2,2'-azobis (2-amidinopropane)dihydrochloride (AAPH)あるいは脂溶性の2,2'-azobis (2,4-dimethylvaleronitrile)(AMVN)を用いた。各々組み合わせにより、以下、AAPH-CL法、AMVN-CL法とする。 実際の調理加工品を用いて検討する前に、各種カテキン化合物を用いてAAPH-CL法およびAMVN-CL法の確立を行った。この2つの方法は用いるアゾ化合物が違うこと以外に、AMVN-CL法では溶解性を増すために0.5MのSDSを使用した。その結果、AAPH-CL法では、(-)-epigallocatechin gallate (EGCg)が最も活性がミ強く、水溶性抗酸化ビタミンの代表であるアスコルビン酸の2倍以上であった。一方、AMVN-CL法では、(-)-epicatechin (EC)が最も活性が強く、水溶性抗酸化ビタミンの代表であるα-tocopherolの3倍以上の値を示した。EGCgはECの1/30しか活性を示さなかった。このように、水溶性・脂溶性の環境下では活性の強弱に差があり、各々の調理加工の環境を考慮した上で適切な抗酸化剤の使用が望まれる。また、カレーライスを調理加工品に用い、調理過程における抗酸化の変化を検討した。その結果、両測定法ともラジカル捕捉活性の変化を追跡することが可能であった。特に、野菜や肉を含む具を加熱することにより、水溶性・脂溶性を問わずラジカル捕捉活性が増加した。 咀嚼嚥下者用の検討として、本年度は寒天・リンゴのすりおろし・大根・長いもによるトロミを付与した調理加工品を選んだ。この中で特に寒天やスクロースなどの糖類を共存させ加熱したところ、調理加工品(お茶寒天・リンゴのシロップ煮)のラジカル捕捉活性が有意に増加したことを見出した。来年度は、糖類でもカラギーナンやローカストビーンガム、そしてタンパク質系のゼラチンを主成分としたトロミ増強剤を用い、QOL向上を満たした咀嚼・嚥下障害者用の調理加工品を提示する予定である。
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