20年度は昨年度のβ-LGの遺伝的変異体(AタイプとBタイプ)を用いたSH化合物との反応性に関する実験に引き続く形として、AタイプとBタイプの混合物であるβ-LGABタイプを用いてα-LAやシステイン(Cys)との相互作用を調べた。即ちCys存在下でβ-LGABタイプ・α-LA混合系のゲル化現象がどのような影響を受けるのかを調べた。 その結果、まずα-LAは試薬標品中に0.3%程度以下のカルシウムを含有しており、これがα-LA自体のゲル化に影響(ゲル化促進作用)することが判った。一方脱塩後のα-LA(apo-LA)は既知の通りそれ自身のゲル形成は困難であった。しかしながらβ-LG存在下ではα-LAはゲル化を疎外することなく、更にCysの共存下ではCys無添加に比べより低温(40℃付近)で系中の圧縮率に変化が生じた。即ち超音波分光分析における超音波速度の減少(即ち圧縮率の増加)や超音波減衰の増加が早期に見られた。 超音波分光分析に加え、動的粘弾性測定でも上記に一致した現象が観察された。今後電子顕微鏡観察等の手法も加えて、より総合的にβ-LGのゲル化に及ぼすα-LAやCysの添加効果を把握することに努めたい。 尚、本研究と平行して行っている他の低分子化合物(脂肪酸塩)を添加した場合には、用いる乳タンパク質画分の種類により効果が異なることが見出されるとともに、超音波分光分析によりカゼインミセルのような自発的会合(ゲル化と異なる現象)をもモニターすることが可能であることが判りつつある。今後更に解析する予定である。
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