冷凍食品は、解凍条件と調理法によって価値が大きく変化する。本研究では、冷凍食品の解凍過程を食品研究用に開発した小型MRI(Magnetic Resonance Imaging)によって非破壊的、経時的に追跡して冷凍食品の品質をモニターするための指標を把握するとともに、経験的に推奨されている解凍方法を理解し、適正な解凍および調理に繋げる基礎とする。 食肉の筋肉組織の水は運動性が高く、脂肪組織の脂は運動性が低いため、運動性と相関を持つT 1(縦緩和時間)の重み付けをしたMR画像(T 1強調イメージ)によって明瞭に区別できた。冷凍豚肉と冷凍牛肉の自然解凍過程を、経時的にMR画像およびNMR(Nuclear Magnetic Resonance)スペクトルによって追跡し、豚肉では解凍の初期段階で脂肪のシグナルが観測され、その後、筋肉組織のシグナルが強くなるが、牛肉では筋肉組織の水が先行して解凍し、解凍が進むと脂肪組織のシグナルが強くなるという差異があることを示した。 脂肪交雑等級が異なる市販サーロインステーキの形態を3D測定し、目視で行われる脂肪交雑の評価に、MRIは形態的側面で合理的な裏付けを与える手法であることを示した。-40℃で凍結した試料の自然解凍過程において、脂肪交雑等級の低い肉では時間に対して直線的に解凍し、解凍後、ドリップによるシグナルの減衰が起きた。一方、脂肪交雑等級が高くなると解凍は速く凸型カーブとなり、ドリップの漏出が抑制された。脂肪交雑等級の高い肉の解凍のキネティックスにおいて、三種類の融解速度の異なる脂肪成分が検出された。最も融解が速い成分は、豚肉と同楼に解凍開始直後に溶けた。融点が低い脂肪酸は、不飽和度が高い脂肪酸のトリグリセリドで固い牛肉に柔軟性を与える作用を持つと推察される。解凍条件の厳密性を高める目的で温度コントロール測定セルを作製し、性能をテスト中である。
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