研究概要 |
冷凍豚肉について,旨味と口当たりの要素である脂肪組織の構造,および,解凍における油脂の性質について1T小型MRIで解析した.3D測定結果の断層イメージおよび立体表示により,脂肪組織と筋肉組織の界面構造を明瞭に描写した.-40℃で凍結したバラ肉の解凍では,筋肉の水が完全に解けた後,ドリップが発生した.脂肪には非常に融点が低い第I成分,水の完全解凍直後に融解する第II成分,および,高い温度で融解する第III成分が存在し,第III成分の融解とともに,さらに水が増加した.Dixon効果イメージにより,脂肪組織にもかなりの量の水が均一に存在することが明らかとなった. 冷凍魚の解凍を,測定セルが大きな0.2T小型MRIで解析した.魚類では冷凍・解凍によって水の運動性のMRIパラメーター(緩和時間)が変化し,組織構造変化を示す指標となった.しかし,構造の変化は局所的,立体的に発生するため肉類の解析で用いた二次元画像では全体を把握しがたく,磁化率の乱れを基にコントラストを得る3Dグラディエントエコー(GE)法によるMIP(最大信号強度投影)イメージに構造変化が良く反映された.解凍初期に強い信号を与える組織の細部構造が,凍結によって破損を受けると考えられる. 液冷(ガルデン使用)式温度調節検出器を使用し,5℃〜25℃で冷凍ソーセージの解凍を3D-GE法で追跡した.25℃では肉の水が先に解け,水が完全に解凍した後に脂身の油脂が融解してイメージのコントラストが逆転した.一方,5℃では脂身の油脂が融解しなかった.さらに,低温領域の測定用にドライアイスを冷剤とし,窒素気流による空冷式温度調節装置を作製した.通常実験室で低温気流を作ることは,気流導入パイプの断熱の問題で予想を超えて困難であったが,作製した装置は測定セルを-40℃〜0℃の範囲に制御できた.本装置によりミカンおよび牛肉の凍結過程のイメージを経時的に測定することが可能であり,有用な装置であると考えられる.冷凍保存温度の評価への応用ために装置の調整を進めている.
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