研究概要 |
パンコムギのワキシー蛋白質遺伝子の機能の変化に伴うアミロペクチン(AP)の構造および特性の変化に関する明確な結論を得るため,研究材料としてWx-D1座以外の遺伝的背景がほぼ同一な突然変異系統および準同質遺伝子系統を用いた。これらの研究材料は,小麦関東107号の遺伝的背景をもち,アミロース含量が4水準で異なる。APの還元末端をピリジルアミノ(PA)化して蛍光標識し,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて分画した画分からエタノール沈殿法でAPを回収し,側鎖をイソアミラーゼで切断し,水素化ホウ素ナトリウムで還元後,パルスド・アンペロメトリー検出器を付属させた高速陰イオンクロマトグラフィー(HPAEC-PAD)を用いて,重合度60程度までの側鎖について側鎖長分布を測定しようとしたところ,ベースラインが著しく変動する現象が認められた。PA化したマルトオリゴ糖(標準品)ではこの現象は認められなかったため,PA化糖そのものではなく,共存物質の影響と判断されたが,研究期間中には解決策を見いだすことができないと考えられたため,当初の研究実施計画を変更し,PA化していないAPを用いて検討することにした。ヨウ素-AP複合体の極大吸収波長および青価には,研究材料による違いが認められなかった。側鎖をイソアミラーゼで切断した試料をSECで,さらに水素化ホウ素ナトリウムで還元した試料をHPAEC-PADで測定したところ,研究材料による違いは認められなかった。以上の結果から,ワキシー蛋白質遺伝子の機能とAPの構造および特性との関連は認められないと結論した。
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