研究概要 |
我々はNASHでの病態進展の解明にむけて、脂質代謝改善,抗炎症作用を有するとされる食品由来のエイコサペンタエン酸(EPA)または種々の酵素活性に影響する亜鉛に着目してきた。本年度は主に臨床調査研究を行い、一方で次年度以降の課題である実験研究での線維化に及ぼす亜鉛の影響に使用するin vitroの実験系を確立した。 1.調査研究NASH患者への栄養機能成分の影響 K病院通院中のNASH患者をDiet群、食事指導+ビタミンE,C投与群、食事指導+ビタミンE,C+EPA投与群に割り付け、6ヶ月間観察した。今年度は3ヶ月までの結果が得られたので本期間中の酸化ストレス指標と病態との関連について検討した。3ヶ月時で臨床検査値のうち肝障害指標については特にVitamin群で低下傾向を示し、Diet群、EPA群では明らかな変化は見られなかった。炎症性サイトカインTNF-αもVitamin群で低下傾向を示した。BMI、体重減少率がVitamin群で低下傾向を示した。そこで体脂肪率変化とALT値改善の関連を検討したところ、有意な正の相関が認められた。結果から肝障害指標の改善には体脂肪率の減少が関与する可能性が示唆された。したがって、今回の症例においては抗酸化ビタミンまたはEPA投与の影響は本期間中では明らかはとはいえず、むしろ適正体重を目標にした減量、特に体脂肪率の減少を行うことは治療を効果的にすることが示唆された。 2.実験研究、培養肝星細胞増殖への亜鉛添加の影響 ヒト由来株化肝星細胞LI90を用いて、亜鉛欠乏状態を実験的に確立した。1)コントロール群,2)亜鉛欠乏群(亜鉛キレート剤を添加),3)亜鉛イオノフォア添加群とし,増殖または細胞障害効果を検討したところ、亜鉛欠乏群においては24、48時間培養における細胞障害は観察されなかったものの、過剰量(600μM)亜鉛添加群においては細胞障害を示した。
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