研究概要 |
肝線維化における亜鉛欠乏状態が及ぼす影響について株化肝星細胞を用いて亜鉛欠乏の影響を検討した。また調査研究については,前年度に引き続きNASH患者に対する食事療法を基本とした抗酸化ビタミンおよびEPA投与における継続観察塗行った。 1.培養肝星細胞への亜鉛添加によるコラーゲン合成・分解に対する影響:ヒト株化肝星細胞LI90を基本培地において各種サイトカイン刺激(IL-1, TNF-a, TGF-b)、もしくは細胞内の亜鉛欠乏と亜鉛過剰状態でのコラーゲン合成および分解に関連する酵素を検討した。その結果、亜鉛キレート剤添加においてゼラチンザイモグラフィーでの活性化MMP9の出現傾向がプラスチックシャーレおよび3次元培養において観察された。一方培地中のコラーゲン量を測定したところ、明らかな差は観察されなかった。今後関連遺伝子の発現レベルなどを検討予定である。 2. NASH患者への栄養機能成分の影響: K病院通院中のNASH患者をDiet群、食事指導+ビタミンE, C投与群、食事指導+ビタミンE, C+EPA投与群に割り付け、6ヶ月間観察した。臨床検査値のうち肝障害指標については特にVitamin群で低下傾向を示し、Diet群、EPA群では明らかな変化は見られなかった。CK18は肝障害指標の改善とCK-18濃度の低下に相関が見られた。また血中α-トコフェロール濃度変化率と体脂肪率について、有意な負の相関が認められたr=-0.818(P<0.05)。結果からビタミン群での肝障害指標改善が認められたものの、体脂肪率の減少が関与する可能性も示唆された。したがって、今後実験デザインの再検討を行い、抗酸化ビタミンの影響をさらに詳細に検討する必要があると考えられた。しかしながら適正体重を目標にした減量、特に体脂肪率減少を目標にした食事療法の有効性は示唆された。
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