肥満はメタボリックシンドローム、動脈硬化性疾患の重要基盤と考えられている。よって、肥満の病態を解明することは、その予防および治療に直結することから、社会的貢献は計り知れない。一方、女性と男性では肥満の臨床像(頻度、年齢分布など)が大きく異なっており、女性の肥満の特性およびその分子生物学的機序の解明は、肥満の全体像を明らかにし予防および治療法を確立する上で非常に重要と考えている。我々は、ヒト腎細胞HEK293を用いてレプチン受容体安定発現型細胞株を樹立し、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)がレプチン受容体情報伝達に及ぼす影響を検討している。エストロゲン及びプロゲステロンはステロイドホルモンの一つであり、我々は既にデキサメサゾがレプチン受容体の情報伝達を抑制することを報告していた。平成19年度の実験では、非常に興味あることに、これらの性ホルモンは同じステロイドホルモンでありながら、レプチンの情報伝達を増強し、予想とは反対の結果を得た。エストロゲン及びプロゲステロンは種々の濃度と時間で前処置し、レプチン刺激によるSTAT3のリン酸化をウエスタンブロッティングで繰り返し検討しているが、その結果は非常に再現性の高いものである。現在、レプチン受容体情報伝達の上流側(STAT3の上流)JAK2の変化を検討するとともに、関連する情報伝達経路の抑制剤を使用し、その増強効果のメカニズムを検討中である。 (平成20年度にこれらの性ホルモン作用についてメカニズムを中心に実験を進め、とりまとめる予定である。)
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