研究概要 |
食品摂取後の血糖値の変動は、「消化管からの糖質の吸収速度」だけで決まるのではなく、「血中グルコースの消失速度[グルコースクリアランス(CL_<GLU>)]:インスリンの分泌によって大きく変動する血中から組織中へのグルコースの取り込み速度」も密接に関与していると考えられる。従って、食品摂取後の血糖値上昇の抑制が、「消化管からの糖質吸収抑制なのか?」「インスリンが過剰に分泌されて結果的に血糖値の上昇が抑制されたのか?」を分別評価するためには、食品摂取後に観察される血漿中インスリン濃度の上昇とインスリン分泌によって促進されるGLT4(筋肉や脂肪細胞に存在するグルコーストランスポーター)のトランスロケーションによるCL_<GLU>の増加を定量的に関連付ける必要がある。そこで、グルコースを直接静脈内へ投与した場合(100%吸収)と経口投与した場合(投与量:25,50,75g/60kg)の血糖値と血漿中インスリン濃度を経時的に測定し、投与量とCL_<GLU>との関係及び血漿中インスリン濃度(AUC_<INS>)とCL_<GLU>との定量的な関係について検討を行った。その結果、グルコースを直接静脈内へ投与した場合と経口投与した場合の両方において、AUC_<INS>とCL_<GLU>に良好な相関関係が存在することが明らかとなった。得られた相関関係を用いて、水懸濁高アミロースコーンスターチと五分間煮沸した後の水懸濁高アミロースコーンスターチ摂食後の糖質吸収率[真のグライセミックインデックス(GI)]を算出した。その結果、得られた真のGIはインスリン動態を忠実に反映している値であることが明らかとなった。
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