研究概要 |
長野県東御市住民健康診査の参加者(約2600名)に(1)(2)(3)の調査を実施した。(1)「3日間の食事調査」ではランダムサンプリングした340名のうち有効回答が得られた139名について分析を行った。(2)「簡易の食事調査」では1589名から有効回答を得た。(3)「食生活に関するアンケート」は食習慣や社会的認知理論に基づいた食行動に関する項目を取り入れた調査とし,1453名から有効回答を得た。さらに健診当日の亜鉛に関する(4)ミニ講話には1593名が参加し,そのうちの638名が(5)双方向型の食生活改善プログラム(郵送法によるリーフレットの配布とセルフモニタリングシートの返送)に参加希望した。調査(1)から,1食あたりの摂取食品数と亜鉛摂取量との間に有意な正の相関関係(R=0.679,p<0.001)が認められたことから,亜鉛摂取状況の指標として毎食ごとの食品数を用いてセルモニタリングすることを(5)に取り入れた。1食あたりの目標食品数8.6食品以上という値は,男女それぞれの食事摂取基準の亜鉛推奨量を(1)の関係式に代入して検討した値である。調査(2)から52%が目標食品数未満であり,亜鉛摂取量を増やす必要性が示唆された。また,被調査者の自己採点した食品数と調査者が採点した食品数との間に差は認められず,食品数を目安に亜鉛摂取量を推定する方法の有効性が示唆された。 血清亜鉛濃度の測定は,当初平成19年度と21年度に実施し(4)(5)による変化を観察する予定であったが平成19年度の実施を見送った。理由は住民健康診査を開始する時期(6月)までに翌年以降の特定健診の仕組み作りが明らかにならなかったためである。しかし申請者は平成18年度に東御市が実施した血清亜鉛濃度測定結果の分析依頼を受けており,またその際に(2)と類似の調査を実施していたためこれらの結果をベースラインとして平成20年度以降の特定健診受診者と照合を行うことで(対象者変更のため予定より人数が減る可能性を含む)(4)(5)の介入効果を観察する。この成果は保健指導の有効な方法を考察するための貴重な資料となりうる。
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