研究概要 |
20年度に引き続き、食塩負荷が及ぼす脳や腎臓の血管変化が遺伝子産物発現(mRNA)に現れると考え、正常血圧のWKYと、高血圧モデル動物のSHR, SHRSP, M-SHRSPの各6週齢(高血圧未発症時)と9週齢(高血圧発症時)のラットに食塩とNa^+排泄に関与するTCMを負荷して、発現する遺伝子変化をDNAアレイを用いて、副腎、腎臓、腸管膜動脈、脳幹組織で網羅的に比較実験した。その結果、食塩負荷によりプロコラーゲンタイプIV、ATP結合ドメイン3、H^+/K^+輸送ATPaseα、サイクリンキナーゼ阻害物質1Aなどの遺伝子産物が倍増し、PGエンドペプチダーゼ2、キニノーゲン1、Aキナーゼアンカー蛋白11、レニン1などの遺伝子産物が低下していた。したがって、食塩負荷によって、細胞の活性化や炎症機転に関する遺伝子発現が増加し、レニン・アンジオテンシン系調節因子に関する遺伝子がおそらくフィードバック機構を介して低下することが明らかとなった。 また、最初に纏めることができた副腎組織においては、SHR系統において、Spock2, Kynu, Rgs2, Gja1遺伝子がWKYよりも有意に高発現しており、Uts2, Ephx2, Apln, lgf1r, Agtrap遺伝子が有意に低発現していた。今後TCMの作用も解析できると思われ、また、腸管膜動脈を用いた発現遺伝子解析実験も進めていることから、食塩が腎臓、抵抗血管に与える影響が今後のデータ解析により明らかにできると考えられる。
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