研究概要 |
本研究課題では、未利用海産藻類に含まれる糖タンパク質あるいは糖脂質に結合する糖鎖の細胞免疫活性と抗アレルギー性について以下の点を明らかにすることを目的とする。(1)海産藻類に発現される糖タンパク質糖鎖、糖脂質糖鎖の構造特性、(2)海藻オリゴ糖鎖が有する抗原性、(3)海藻糖タンパク質に結合する抗原性糖鎖のヒト細胞性免疫に及ぼす生理機能(T-細胞の分化・生育、サイトカイン分泌促進)、(4)抗原性糖鎖の細胞性免疫調節活性(サイトカイン分泌促進・抑制活性)を利用したアレルギー疾患(花粉症)治療薬(糖鎖薬剤)開発の可能性。以上の解析結果から、未利用海産藻類に含まれる糖タンパク質・糖脂質に結合するオリゴ糖鎖の機能性食品あるいは医療素材開発の基礎が確立されるものと考える。本年度は、瀬戸内海産海藻試料を用い,熱湯抽出物の凍結乾燥標品をアクチナーゼ処理した後、糖ペプチドをDowex50×2樹脂により部分精製し糖鎖構造解析を行った。褐藻類:ホンダワラ、緑藻類:アナアオサ由来の糖ペプチドについては、糖ペプチドをヒドラジン分解後,2-アミノピリジンにより蛍光標識糖鎖を調製した。2種カラムによるHPLCにより糖鎖を精製後,質量分析,酵素消化法により化学構造を解析した。その結果,アオサからはN-グリカンが殆ど検出されなかったが,ホンダワラからはハイマンノース型N-グリカンが多量に得られた。特に高分子サイズ(Man9-7GlcNAc2)構造の占める割合が多く,いずれの糖鎖もManα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Manα1-3)Manβ1-4GlcNAc β1-4GlcNAc構造を骨格とする構造であった。その一方で,α-マンノシダーゼ消化に抵抗性を示すオリゴ糖鎖が蛍光標識糖鎖の50%程度を占めることが明らかとなり,海藻に特異的な複合型糖鎖の存在が示唆された。
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